Proto Manufacturing 社
X線回折(XRD)残留応力測定システム|据置・可搬・ロボット型

製品特長
- sin²ψ法(多重露光法:MET)によるX線残留応力測定
- 据置型LXRD、可搬型iXRD、小型iXRD Mini、ロボット型roboXRD、超可搬型mXRD
- 2台のX線検出器と正負のψ傾斜データによるせん断応力評価
- Cr・Co・Cu・Mn・Fe・Ti・Vなど、材料に応じて選べるX線管球
- 残留応力マッピング・深さ方向評価・残留オーステナイト測定(構成により対応)
- PROTO XRDWIN® 2.0による測定、ピークフィッティング、応力解析
Proto Manufacturing社の残留応力測定システムは、X線回折(XRD)で結晶格子のひずみを測定し、金属・合金などの表面および表面近傍に存在する残留応力を評価する装置群です。広く利用されているsin²ψ法(sin2ψ法)の多重露光法(Multiple Exposure Technique:MET)を採用し、複数のψ傾斜角で取得した回折ピークから応力を解析します。2台の検出器を用いた正負のψ側のデータ取得により、通常応力に加えてせん断応力成分の評価にも利用できます。
ラインアップは、高出力の据置型LXRD®、ラボと現場を行き来できるモジュール式iXRD®、小型・可搬型のiXRD Mini™、複雑形状部品の自動測定に適した6軸ロボット型roboXRD™、配管・圧力容器・橋梁などの現場測定に適した超可搬型mXRD®の5シリーズです。測定対象の材質、部品寸法、測定箇所へのアクセス、必要な測定方向、マッピング範囲、処理能力に応じてシステムを選定できます。
溶接、ショットピーニング、熱処理、研削・切削、積層造形、疲労強度評価、工程管理などに加え、構成により残留応力マッピング、深さ方向プロファイル、残留オーステナイト、X線的弾性定数(XEC)、極点図などへ拡張可能です。装置選定、測定条件、価格、納期については、ラドデバイス株式会社までお問い合わせください。
X線回折(XRD)による残留応力測定とは
残留応力とは、外力を取り除いた後も材料や部品の内部に残る応力です。溶接、熱処理、鋳造、鍛造、切削、研削、表面改質、ショットピーニング、積層造形などの工程で発生し、疲労寿命、き裂の発生・進展、寸法安定性、耐応力腐食割れ性などに影響します。圧縮残留応力は疲労強度の向上に寄与する場合がある一方、引張残留応力は損傷リスクを高める場合があるため、製品設計、工程開発、品質保証、寿命評価では応力の大きさと分布を把握することが重要です。
Proto Manufacturing社のX線残留応力測定装置は、結晶格子面間隔の変化をX線回折で捉え、sin²ψ法(sin2ψ法)の多重露光法:METで残留応力を算出します。測定そのものは基本的に非接触・非破壊で、結晶質材料の表面および表面近傍を評価できます。深さ方向の応力分布を求める場合は、電解研磨による逐次層除去と組み合わせます。
- ラボ・工場で高スループットに測定:LXRD®
- ラボと現場を1台でカバー:iXRD®
- 省スペースで基本測定と直線マッピング:iXRD Mini™
- 複雑形状部品を多点・自動測定:roboXRD™
- 配管、圧力容器、橋梁などの現場測定:mXRD®

据置型・高出力画像出典:Proto社 LXRD公式ページ

可搬・モジュール型画像出典:Proto社 iXRD公式ページ

小型・可搬型画像出典:Proto社 iXRD Mini公式ページ

6軸ロボット型画像出典:Proto社 roboXRD公式ページ

超可搬・現場型画像出典:Proto社 mXRD公式ページ
残留応力測定システムのラインアップ比較
| シリーズ | 設置・運用 | 適した測定 | 主な特長・代表仕様 |
|---|---|---|---|
| LXRD® | 据置型 ラボ/工場 |
研究開発、品質保証、量産部品、高スループット測定、大型・重量部品 | 高出力・連続運用を想定したプラットフォーム。Standard、Widebody、Modular Mapping、Gantry、Dual-Axisを用意し、残留応力マッピング、微小部測定、三軸測定、残留オーステナイト測定などへ構成可能。 |
| iXRD® | 可搬・モジュール型 ラボ/工場/現場 |
大型部品、配管、溶接部、内径部、現地測定、可搬マッピング | 300 Wの一体型制御ユニット、複数のゴニオメーター、マウント、フィールドスタンドを組み合わせ可能。Comboエンクロージャー、Modular Mapping、Gantry、内径測定用の小型ゴニオメーターにも対応。 |
| iXRD Mini™ | 小型・可搬型 | 基本的な残留応力測定、省スペース導入、直線マッピング | 20 W(20 kV/1 mA)、ゴニオメーター質量2.5 kg、50 mm直線マッピングスライド、デュアルフォトンカウンティング検出器。システムを1つのトラベルケースに収納可能。 |
| roboXRD™ | 6軸ロボット型 | 複雑形状、曲面、多点測定、自動位置決め、残留応力マッピング | アーム到達距離1,210 mm、6自由度、位置決め精度10 µm(メーカー仕様)、φ回転0~340°。LP200プロフィロメーターとの組み合わせに対応。 |
| mXRD® | 超可搬型 現場 |
配管、圧力容器、橋梁、大型構造物、保守点検現場 | 測定ヘッド質量2.6 kg、40 W(20 kV/2 mA)、デュアル検出器、1つのトラベルケースに収納。磁気固定脚、ラボスタンド、遮へい、X-Yマッピングなどをオプション設定。 |
上記はメーカー公開情報に基づく代表仕様です。装置構成、管球、検出器、ステージ、遮へい、ソフトウェアの組み合わせにより仕様は変わります。測定時間、測定精度、適用可能なスポット径は、材質、回折線、結晶粒径、集合組織、表面状態、部品形状、期待応力、測定点数によって異なります。
測定原理:sin2ψ法の多重露光測定
X線回折による残留応力測定では、対象材料の特定の結晶格子面(hkl)から得られる回折ピーク位置を測定します。応力により格子面間隔dが変化すると、ブラッグの条件に従って回折角2θが変化します。試料面法線に対する格子面法線の傾斜角ψを複数設定し、各ψ角で得た2θをsin2ψに対してプロットします。その回帰勾配にX線的弾性定数(XEC)を適用することで、指定方向の残留応力を算出します。
- 複数のψ角で測定:単一の露光だけでなく、複数点から2θ-sin2ψ線図を構成し、回帰状態や非線形性を確認できます。
- 正負のψ側を取得:2台の検出器を用いて正負の傾斜側の情報を取得し、ψスプリッティングやせん断応力成分の評価に利用できます。
- 測定データを診断しやすい:回折ピーク形状、半価幅(FWHM)、強度、回帰残差などを確認しながら解析条件を検討できます。
- 複雑な応力状態へ拡張:φ回転や追加軸、解析モデルを組み合わせることで、複数方向測定、主応力、三軸応力解析に対応できます。
X線応力測定の対象は、解析可能な回折ピークを持つ結晶質材料です。非晶質材料のみで構成される試料には原理上適用できません。また、粗大結晶粒、強い集合組織、複相材料、曲率、表面粗さ、組成勾配、急峻な応力勾配、薄膜・コーティングでは、管球、回折面、ビーム径、ψ角、φ角、露光時間、解析モデルの最適化が必要です。測定可否と期待精度は、試料情報を基に事前検討します。
検出器・ゴニオメーター・位置決め
測定目的に合わせたX線検出器
モデルと構成に応じて、位置敏感型シンチレーション検出器(PSSD)、デュアルフォトンカウンティング検出器、2D固体Siフォトンカウンティング検出器などを選択できます。広い2θ範囲を取得できる検出器構成は、測定時間の短縮とピーク形状の把握に有効です。デュアル検出器配置は、正負ψ側のデータ取得とせん断応力成分の評価に利用されます。

部品形状に合わせたゴニオメーターとステージ
据置型エンクロージャー、XY/XYZマッピングステージ、φ回転、ガントリー、Cフレーム、コブラアーム、磁気固定脚、三脚、配管用スタンド、小径内面用ゴニオメーターなどを組み合わせられます。測定対象を動かす構成と、測定ヘッドを動かす構成を選べるため、小型試験片から大型構造物、内径部、複雑曲面まで測定アクセスを設計できます。
解析ソフトウェア PROTO XRDWIN® 2.0
各残留応力測定システムの中核となるWindows®ベースの測定・解析ソフトウェアです。データ取得からピーク処理、応力計算、グラフ表示、各種ユーティリティまでを一つの環境で実行します。

| 機能区分 | 主な機能 |
|---|---|
| ピークフィッティング | 放物線、Gaussian、Pearson VII、Cauchy、centroid、centered centroid、mid-chordなど |
| 応力解析 | 線形回帰、楕円回帰、Dölle-Hauk、三軸応力解析など |
| 結果表示 | ピーク強度、ピーク幅、半価幅(FWHM)、2θ-sin2ψ線図など |
| 解析ユーティリティ | X線的弾性定数(XEC)、主応力、材料除去・侵入深さ、残留オーステナイト、極点図、単結晶応力など |
対象材料とX線管球の選定例
残留応力測定では、対象相の高角側に十分な強度の回折ピークを得ること、蛍光X線によるバックグラウンドを抑えること、必要な侵入深さと空間分解能を確保することが重要です。Proto社は複数のアノード材を用意しており、対象材料と測定する回折面に合わせて管球を選定します。

| 測定対象の代表例 | X線管球アノードの代表例 |
|---|---|
| フェライト系・マルテンサイト系鋼 | Cr |
| アルミニウム合金 | Co |
| チタン合金、Ni、超硬合金(WC)、Ta | Cu |
| オーステナイト系ステンレス鋼、Cu、Cu-Be、Ni基合金 | Mn |
| ジルコニウム合金 | Fe |
| TiAlN | Ti |
| β型チタン合金(BCC) | V |
表はメーカーが示す代表的な組み合わせです。同じ合金系でも相、組成、熱処理、測定回折面、検出器範囲により最適な管球は変わります。最終選定は回折パターンと測定目的を基に行います。
残留応力マッピングと深さ方向プロファイル
残留応力マッピング
点測定だけでなく、ライン、矩形、教示点などの座標列に沿って測定し、部品表面の残留応力分布を可視化できます。溶接線周辺、歯車歯元、ショットピーニング処理面、積層造形部品、研削面、局所熱処理部など、応力が位置によって変化する対象の評価に適しています。モデルに応じてXY、XYZ、φ回転、ロボット位置決めを組み合わせます。


深さ方向の残留応力
表面から深さ方向への応力分布は、電解研磨で材料を少量ずつ除去し、各深さでX線応力測定を繰り返すことで取得します。Proto Electropolisher Model 8818-V3は、機械研磨に伴う冷間加工の影響を避けやすい層除去手段です。LP200プロフィロメーターで除去深さを測定し、残留応力-深さプロファイルの作成に利用できます。層除去後の応力再配分が問題となる形状では、必要に応じて補正や測定計画の検討が必要です。


追加可能な材料評価
- 残留オーステナイト量の測定(対応モデル・構成)
- X線的弾性定数(XEC)の測定・材料校正
- φ回転を用いた複数方向測定、主応力、三軸応力解析
- 極点図、集合組織、単結晶方位・単結晶応力
- 窒化物分析などの追加アプリケーション
主な用途・測定対象
| 分野・工程 | 評価例 |
|---|---|
| 熱処理・表面硬化 | 焼入れ、浸炭、窒化、高周波焼入れ後の残留応力、工程条件の比較、深さ方向分布 |
| 研削・切削・成形 | 研削焼けや加工条件に伴う表面応力、工具・工程変更前後の比較、寸法安定性評価 |
| ショットピーニング・レーザーピーニング | 導入された圧縮残留応力の大きさ、均一性、処理範囲、深さ方向プロファイル |
| 溶接・接合 | 溶接金属、熱影響部、溶接止端周辺の応力分布、施工条件・後処理の比較 |
| 積層造形(AM) | 造形方向、支持条件、熱処理、造形パラメーターによる残留応力の変化とマッピング |
| 航空宇宙・自動車・機械 | 歯車、軸、軸受、ばね、タービンブレード、着陸装置、クランク・カム部品など |
| エネルギー・インフラ | 配管、圧力容器、橋梁、発電設備、大型構造物の現場測定と保全評価 |
| 非鉄金属・セラミックス・コーティング | Al、Ti、Ni、Cu、Zr合金、超硬合金、結晶性セラミックス、硬質膜などの応力評価 |
測定例



装置選定時にご提示いただきたい情報
最適なX線応力測定装置、管球、ゴニオメーター、ビーム径、ステージ、遮へいを選定するため、可能な範囲で次の情報をご提示ください。
- 材質名、規格、組成、熱処理、想定される相、コーティングの有無と厚さ
- 部品の外形寸法、質量、曲率、測定面、内径、測定箇所までのアクセス
- 測定したい応力方向、必要なスポット径、測定点数、ライン/面マッピング範囲
- 表面応力のみか、電解研磨を用いた深さ方向プロファイルも必要か
- 残留オーステナイト、XEC、極点図、三軸応力など追加評価の要否
- ラボ、工場、屋内外現場の別、可搬性、自動化、処理能力、設置スペース
- 既存データ、期待応力範囲、必要な再現性・不確かさ、適用規格・社内手順
よくある質問
Q. X線残留応力測定では、材料のどの深さを測定しますか?
一般的な実験室X線では、材料表面から数µm~数十µm程度の表面近傍が主な情報深さになります。ただし、実効侵入深さは管球波長、材料の吸収係数、回折角、入射・回折幾何、相によって変わります。厳密な評価では測定条件ごとに侵入深さを計算します。
Q. X線残留応力測定は非破壊ですか?
表面をそのまま測定する場合、X線照射による測定は基本的に非接触・非破壊です。ただし、塗膜や酸化皮膜の除去、表面調整が必要な場合があります。また、深さ方向プロファイルでは電解研磨により材料を逐次除去するため、その工程は局所的に破壊を伴います。
Q. どのような材料を測定できますか?
鋼、ステンレス鋼、Al、Ti、Ni、Cu、Zr合金、超硬合金、結晶性セラミックス、結晶性コーティングなど、解析可能な回折ピークを得られる材料が対象です。非晶質材料のみの試料には適用できません。多相材料では、選択した回折ピークに対応する相の応力を評価します。
Q. sin2ψ法とcosα法は何が違いますか?
いずれもX線回折で格子ひずみを測定する方法ですが、取得する回折情報と試料傾斜の考え方が異なります。Proto社のシステムは、複数のψ角で回折ピークを取得するsin2ψ法の多重露光測定を採用しています。複数点の2θ-sin2ψ線図、正負ψ側、ピーク形状を確認できるため、回帰状態やせん断応力の検討に有効です。最適な方法は、部品形状、結晶粒径、集合組織、必要な応力成分、測定時間、適用規格によって判断します。
Q. 大型部品や現場でも測定できますか?
可能です。現場測定にはmXRDまたはiXRD、大型・複雑形状部品の自動多点測定にはroboXRD、ラボ内で大型部品を扱う場合はLXRD Widebody、Modular Mapping、Gantryなどが候補になります。部品を動かせない場合は、測定ヘッド側を位置決めする構成を検討します。
Q. 粗大結晶粒や集合組織がある材料も測定できますか?
測定できる場合がありますが、回折に寄与する結晶粒数や方位分布が不足すると、ピークが不連続になったり、2θ-sin2ψ線図が非線形になったりします。管球・回折面の選択、ビーム径、測定位置、露光時間、ψ/φ条件、解析方法を最適化し、必要に応じて事前試験を行います。
Q. 残留オーステナイトも測定できますか?
LXRD、iXRD、iXRD Miniなど、対応する2θ範囲とソフトウェアを備えた構成で測定できます。必要な検出下限、鋼種、集合組織、表面状態に応じて構成と測定条件を選定します。
Q. X線の安全対策はどのようになっていますか?
エンクロージャー、可搬遮へい、インターロック、警告灯、シャッター表示などをモデルと運用方法に合わせて構成します。日本国内での設置・使用条件は、装置出力、遮へい方式、使用場所、施設規程および関係法令に基づいて個別に確認する必要があります。

製品選定・見積・測定条件のご相談
「どのモデルが適しているか」「対象材に合うX線管球は何か」「内径部や曲面を測定できるか」「残留応力マッピングや深さ方向評価を自動化したい」といったご相談を承ります。材質、部品図、測定位置、必要な応力方向、希望スポット径、測定点数をご提示いただくと、構成検討がスムーズです。


